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あるデパートのゲームセンター。耳障りな音楽。
「100円入れてね」、「カードを入れてね」、「メダルを入れてね」という何度も繰り返される声。
こんなにも耳障りな声がしつこく繰り返されるのにこのゲームセンターには大勢の客がいた。
家族や友人、中にはカップルできている客もいる。そんな中、一見カップルかと見間違えてしまうような2人組が
いた。だが、その2人組がカップルではないということは顔をみればすぐにわかる。
2人は、姉弟なのだ。
「リョウ!今よ!今!はやくボタンを押すの!」
「え…あ…今?」
リョウと呼ばれた男は慌てて①と書かれた黄色いボタンから左手の人差し指を離し、②と書かれた黄色いボタ
ンをもう片方の手の人差し指で押した。
「あ、バカ!遅いって。あ~あ。なにもつかめなかったじゃないの!!」
「そんなにいうなら姉貴が自分でやれよ」
「あたしは命令係なの!わかった?」
「わっかんねぇよ…」
「いいからもう一回。100円入れなさい」
リョウはジーパンの後ろポケットに手を入れて何枚かの小銭を取り出した。
だが、その中には必要なシルバーの100とかかれた小銭は一枚も見当たらなかった。
「残念。なかったよ。帰ろーぜ姉貴」
「あぁもう!なんで多めに持ってこないのよバカ」
「バカは姉貴。こんなボロいぬいぐるみなんていらねぇよ」
「あたしだっていらないわよ!」
「ならなんで…」
とリョウが言いかけると姉のリュウは亮の言葉をさえぎるようにして怒鳴りつけた。
「だからさっきも言ったでしょ?うちの弟がこれ得意だから取ってきてあげるって依月にいっちゃったの!」
ちなみに依月というのはリュウの同級生であり、これというのはゲーセンの定番であるUFOキャッチャーのこと
である。
「勝手なことすんなよ。それに金ぐらい普通にもらってこいよ」
リョウがあきれ気味にいうとリュウも少し引き受けたことを後悔しつつ、話を続けた。
「あのね…まぁ確かに勝手なことを引き受けちゃって悪いと思ってるわよ。」
「ほんとかよ」
リョウが即答するとリュウは一瞬ムッとなったがそれでも話を続けた。
「けどこっちだって金もらってないのに引き受けるはずないわ!」
「ならなんで引き受けたんだよ?ますますわからん」
「金はね、使った分だけ返してくれるんだって!」
本気でリョウは実の姉に対してあきれてただ一言しかいえなかった。
「なに嬉しそうな顔していってんの………当たり前だろ」
あきれているリョウに気づかないふりをしてリュウはよりいっそう嬉しそうな笑顔で言った